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朝日新聞に掲載されました

少し前後しますが、2020年12月30日の朝日新聞朝刊、北海道内版に掲載されました。

「核のごみを問う」知る・考える

分断を乗り越えるには

絶対に口をつぐんではだめ

今年8月、北海道寿都町が「核のごみ」(原発から出る高レベル放射性廃棄物)の最終処分場の文献調査に応募することを検討しているとニュースで知ったとき、思考停止のような状態に陥りました。対立や分断を生みたくはないから、軽率な発言はできない。でも、何もしないではいられない。でも、何もしないではいられない。私には何ができるだろうと考えました。

 対立と分断が頭をよぎったのは、ふるさとの福島での経験があったからです。

 福島県郡山市で地域誌の編集者とコミュニティーFMのパーソナリティーをしていた2011年3月、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きました。ラジオで寝ずに生放送をしたり、避難所の取材で原発の近くから避難してきた人への差別を目の当たりにしました。

 放射能について勉強すればするほど、ここにはいられないという思いが強くなりました。周囲に「避難しようよ」と積極的に促した時期もありました。でも正解はだれにもわかりません。みんなが不安で、自分の選択を肯定したいし、わかってほしかった。自分と異なる意見を聞くと攻撃されたように感じてしまう。しだいに、本音でしゃべれなくなっていきました。

 本来、人の選択は、だれにも侵害されるべきものじゃない。結局、一人ひとりが選択することでしか未来はつくれない。自分が選択して背中を見せるしかないと思うようになりました。

 原発も核のごみも、元々は私たちの暮らしに根ざした問題です。みんな当たり前のようにエネルギーを依存しています。食べ物も同じです。エネルギーの自給自足は難しいが、まずは農作物を自分たちでつくろう。北海道で出会った人たちとの縁で島牧村でコメづくりを始め、村内に家も借り、札幌と行き来するようになりました。5年が過ぎたころ、隣町の寿都町で今回の問題が起きたのです。

 寿都町の周辺に住む仲間たちとともに「北海道子育て世代会議」を結成しました。合言葉は「分断ではなく調和」「対立ではなく対話」「正誤ではなく選択」。否定や反発ではなく、新しい選択を示すことで未来をつくりたい。11月には寿都町内で自然エネルギーで電気をまかなう音楽イベントを開きました。

 もちろん、突然当事者になってしまった人たちの悲しみや苦しみは痛いほどわかります。思い出すのは、福島時代に仲間と励まし合った「無力感に無力にさせられない」という言葉です。

 文献調査に反対し続ける人たちは、無力感におそわれることがあると思います。でも私たちは決して無力じゃない。だからこそ、絶対に口をつぐんではいけない。だれかが準備した対話の土俵ではなく、まずは家族や仲間、友だち同士で「どう思う」と話したい。しゃべらないと臆測だけで物事が進み、お互いに後悔が残るから。これは道民、国民全体にもいえることです。みんなで対話をして未来をつくっていきたいと思います。(聞き手・伊沢健司)


■略歴

 ししど・ちか 福島市出身。27歳だった2011年冬、福島県郡山市から札幌市へ自主避難。夫と2人の子どもと暮らす。北海道子育て世代会議共同代表。今年10月、文献調査の応募前に住民投票を実施し、近隣自治体の住民の理解も得るように求める公開質問状を寿都町長に提出した。

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